この記事は、
の続きです。
前記事のハイライト
21時。ボッチ飯を終え、天神の街で「夜 スト 」を開始した錬は、人波の中を歩く1人の 案件 を発見する。 フロントアプローチ すると オープン し、そのまま 並行トーク へ。
並行トークで 和み ながらさりげなく飲み屋街に入って行くと、案件は何も言わずに付いて来てくれた。
連れ出し 確定。同棲中の彼氏の元へ帰る途中だったにも関わらず、 ストナン に応じる案件。その真意は定かではないが、 即 の目はありそうだった。
制限時間は終電までの2時間。その中で果たして錬は、即という未来を描くことができるのか。
21時半。居酒屋の個室で私と案件は隣同士に座っていた。
「お待たせいたしました。」
若い男性店員がそう言い私達の目の前にビールと梅サワーを置くと、
「ただ今大変混雑しておりまして、料理のご注文は少々お時間頂いております。」
と1言残してドアを閉め、そそくさとお辞儀をして部屋を出ていった。
私はジョッキを手に取ると、案件に掲げて言った。
私「不思議な出会いに乾杯。」
すると案件もロンググラスを手に取り、私に向けてくれた。
カチン♪
2人の縁が触れ合うと、案件のグラスの氷が小さく踊った。そしてお互いの喉にアルコールが注がれる。
出会ってから30分。即の展開としては極めて順調だ。しかし、2時間後には案件を帰さなければならないので呑気には構えていられなかった。
私は雑談を切り上げ、恋愛話へと踏み込んだ。こうなるともう雑談に後戻りはできない。H クロージング までひたすら 仕上げ ていくだけだ。
私は案件の全身を視界に捉え、どんな些細な反応でも見逃さぬよう意識を向けながら、口を開く。
「彼とは何年付き合っているんだっけ?」
「そろそろ3年ですかねー」
案件は手に持ったグラスに軽く口を付けたまま、抑揚のない声で答えた。
私「へー。結構長いね。今26歳だったらそろそろ結婚だよな?」
案「うーん。・・・どうかなぁ。」
この返答もイントネーションは尻すぼみ。何だか近い将来に結婚するような感じではなかった。それどころか結婚願望があるのかすら怪しいニュアンスだ。
しかし、保育士という仕事柄、結婚願望がないというのは違和感がある。なので、彼氏との結婚願望について窺ってみる。
「なんか彼との結婚に前向きな感じが伝わってこないんだけどw もしかして、浮気心が芽生えやすい”3年目のジンクス”ってやつ?」
ここで案件が、
「そうなんです。」
とでも言えば、私がその心を満たす役になり一丁和了だろう。
スポンサーリンク
しかし、そう上手くはいかずw
「いえいえいえ笑。普通に仲良いですよ。」
「そっか。普通に仲良いんだね。」
バックトラッキング で返すと、案件は言葉を続けた。
「でも最近ずっと忙しくて。。そういえば私の結婚願望はどこに行っちゃったんだろうって、今思いました笑。」
「笑。すでに彼氏が旦那化して、園児たちが自分たちの子供化しちゃってるとか?」
「いや、それはないです笑。」
「結婚願望はいつから迷子なの?」
「いつだろう?もう2年くらい経つのかなあ。」
「なるほどねー。」
そう言って私はビールをすすると、ふと、”案件の結婚願望の在処“を突き止めたくなった。
もしかすると掘り下げる過程で即につながるヒントがあるかもしれない。ヒントはなかったとしても、案件に”何らかの気付き”がもたらされれば、この出会いに価値があったといえる。
だが、 健全解散 でいいのか?
私にとって、「健全解散=負け」だ。いくら相手に気付きを与え、私の心が満たされても、体が満たされなければやがて不完全燃焼の記憶となって揺蕩い続ける。
それはまるで、飾るにも捨てるにも忍びないありきたりなお土産のように。
逆に、泥臭くても何とか仕上げ、 ピロートーク で本音で語り合った方が心も体も満たされていた。
そして、その記憶はいつでも燦然と輝き続けるのだった。
だから私は、積極的に即を獲りにいく展開を選ぶ。たとえそれが、”仮初めの掘り下げ”になろうとも―――。
コトッ。
私はジョッキを静かにテーブルに置き、上半身を完全に案件に向けた。私の左膝頭が案件の右太ももに軽く触れる。
眼前には結婚願望を見失った”迷える羊“。私はこの羊を、”これがあなたの正しい道だ”と説きながら、寄り道させなければならない。
そしてその手法は、反論がなければ自動的に即に結びつく” 決めつけトーク “が効果的だろう。
とはいえ、寄り道はケモノ道。必ず即までたどりつける保証はない。せいぜい数分先の未来をぼんやりと照らすだけだ。道中、小さな油断から足を滑らせれば、ゲームオーバーにだってなりうる。
↑ナンパの仕様ですw
だから、いつも仕掛ける時は緊張する。それでも、ナンパ師を名乗るからには最後まで潔く演じきるだけだ。
私は案件の目を見つめ、ついに仕上げの口火を切った。
スポンサーリンク
「2年間も結婚願望を見失っているのは長いね。その間に浮気とかしたことないの?」
不意に切り込む私に、案件は一瞬「えっ?」という表情を見せたが、意外にもすぐに元の表情に戻った。
「いや、案外浮気がきっかけで彼氏との仲を”見直す機会”になったりもするからさ。」
「見直す機会、ですか?」
「そう。彼氏との関係を”先に進める”機会とも言えるね。付き合い続けるのか、それとも、別れるのか。君は今その岐路に立っていると思う。」
そして間を置かずに言葉を続ける。
「あっ、ごめんいきなりこんな話して(>_<)。でも、君とは今日だけの関係だから、思ったことを素直に話し合えた方が有意義な時間になるのかなと思って。。」
一期一会で言い合える関係を遠まわしに提案すると、案件は、「良いですよ。」と、はにかんでみせた。
私は安堵し、語りかけるように口を開いた。
「君と接していて思ったんだけど。君は日々仕事に明け暮れていて、他の男に目を向ける機会がないのだと思う。
そんな中、3年続く今の彼氏をベストパートナーだと思っている。でも、結婚願望を見失っているようでは、ただの思い込みだと私は思う。多分忙しい毎日が無意識にそうさせているんじゃないかな。少なくとも私には、君との会話で彼氏がベストパートナーだという感じは伝わってこなかったよ。
もし、君が今の気持ちのまま彼氏と続いて結婚したとしても、2人の関係に波風が立ったときには結局この岐路に立たされることになる。
その時になって、彼氏と別れたいと思ってもきっと別れられない。だって、一緒に過ごした年月こそ君の好意のバロメーターなんだから。今決断できないのに、これから先に同じ決断をするのはもっと難しいよ。
そうなると、今後ずっと自分の本心と折り合いをつけながら日々を過ごすことになる。」
私は案件に真剣な眼差しを向け、やや語気を強めて続ける。
↑へ続く。
スポンサーリンク
下記のあなたのご支援が私の活動を支えています。これからも風来のナンパ師「錬」を宜しくお願いします!
エルヴィン(*´▽`*)
いつもコメントありがとう~↑↑いつの間にか自分でも知らないうちに文章に凝っちゃってたwww
立たせてしまったからには、早く続きを書かなくてはなるまいな!(∩´∀`)∩☆☆☆
何じゃこのプロ小説家みたいな文章はぁぁぁぁ(読んでてめっちゃ励起)!!!
続きめっちゃ気になります(;ω;)はよ