2015年5月5日。同級生の友人が1人、開通したばかりの北陸新幹線に乗って帰省していた。
その日2人は金沢競馬場で日中を過ごし、
↑場内の子供向けアトラクション(大人も可)を楽しみながら的中予想するオッサン2人w
夕方になると居酒屋へ。入店するとすぐに「ご予約席」のプレートが置かれたカウンター席に案内された。
「最近このパターンだよな。」
友人が左の椅子に腰掛けながら言う。私も、
「アラフォーにもなると選択肢が限られて来るんだよ。」
と返し、側に控えていた店員に生ビールを2つ注文した。
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乾杯後の話題は専ら仕事とお金の話で、女の話は微塵もなかった。
そのくらい2人はもう何年も異性との縁がなかった。
果たしてこの先”浮いた話”をする時は来るのだろうか、と次々に届く料理を前にぼんやりと考えていた。
料理から左の男に視線を移すと、老けたな、と思う。
加齢だけじゃなく、毎日のハードな仕事からくる慢性疲労が顔に出ていて余計にそう思えるのだ。
ただ、それは自分にも当てはまることだ。
髪はパサパサで肌はくすんだ上にたるみ、顔の輪郭はボヤけてきた。せっかく今こうして疲れを癒しても明日からはまた仕事。しかもGW明けで忙しいと思うと気が滅入った。
2人でひとしきり呑み、食べ、話し終えると、私はふと右隣が気になった。
我々より先にいる1人の女性。ブックカバーを付けた文庫本を片手に、エビの唐揚げとビールでずっと粘っている。
私は背もたれ一杯まで上体を反らし、横目でチラリと相手の全体像を見る。顔はよく見えないが30代前半だろうか。細身の体に黒のショートカットが私好みだ。
スッと伸びた背筋に半袖から伸びる白い腕、そしてページをめくる長い指にムッツリしていると、
「おい、これのどっちかを注文しようぜ。」
と左から声がしてメニューを私の前に滑らせてきた。
メニューの上に置かれた友人の人差し指は、「白エビの唐揚げ」と「ガスエビの唐揚げ」を交互に示した。
それを見た私は、「女性はどっちの唐揚げを食べているのだろう?」と気になり、咄嗟に、
「あの、その唐揚げって白エビですか?ガスエビですか?」
と尋ねた。
私は普段見知らぬ女性に話しかけられないのだが、今回は酔った勢いでたまたま話しかけられた。
女性は特に嫌がる様子もなく、私を見るなり、
「あ、白エビです。」
と答えてくれた。
私は女性の柔和な応対にホッと胸を撫で下ろしたのと同時に、少し嬉しくなった。
「ありがとうございます。あまりに美味しそうだったので我々も注文しようと思って。」
「いえいえ。」
「それにすみません、読書の邪魔をして。」
「いえ、構いませんよ。」
この二言三言の会話で、この女性の柔和さは性格的なものより”育ちの良さ”からくるもののように感じた。
ただ、彼女もまたどこか疲れた表情をしていた。
「居酒屋でまで本を読むなんて、読書がお好きなんですか?」
「はい。ただ、本当は家で読んでいたかったのですけど。」
「では、どうして?」
「家で本ばかり読んでいたら、たまには外に出ろと祖父母から言われまして。」
「なるほど。引き籠りを心配されちゃった感じかな?」
「はい。それで兵庫から来たんです。」
「は?」
「は?」
と我々は綺麗にハモると、
「引き籠り対策に旅行!?」
「初耳だw」
と色めき立った。
「私が元々旅行好きなのを祖父母が知っていて、旅費までくれたので。。」
「なるほど。」
てことは、何かが原因で急に引き籠りだしたってことだよな?疲れた表情とも関係があるのだろうか。
「海外も行くんですか?」
「はい。以前は台湾に行きました。」
「おお!我々も最近2人で行って来たんですよ!」
「台湾のどこ行きました?」
と3人は意気投合。スマホで撮った画像を見せ合い、盛り上がった。
↑2泊3日で台北、九份、高雄、墾丁を巡りました。
女性の渡航歴は豊富で沢山の画像と体験談を披露してくれた。私はそれを興味深く聞く一方で、「これらの旅費も祖父母が工面したのだろうか」と少し気になった。
その後、話題は身の上話へ。女性は現在無職だが、前職が友人と同じ職種だったことでまた盛り上がった。
そこで、テーブル席の方が話しやすいだろうと思い2軒目に誘うと、「OK」。2軒目に移動中、これが俗に言う「ナンパ」なのだろうか、とうっすら思った。
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そして近くのバーへ。
バーでは時事ネタや趣味の話で盛り上がり、あっという間に23時。私は明日から仕事なのでここでお開きとなり、友人は先にタクシーで帰っていった。
残された男女は、ここから程近い女性の宿泊先に向かって歩く。
ホテルが間近に迫ったところで私の方から、
「楽しかったよ。明日も楽しんでね。」
と切り出した。
本当はホテルで一緒に過ごしたかったが、「それはさすがに迷惑だろう」と自分なりに気を遣ったのだった。
すると女性は、
「こちらこそありがとうございました。」
と言い、仏頂面で足早に去っていった。
「最後はやけに淡白な別れ方だな」と感じつつ女性の背中を目で追っていると、ホテルの一階のコンビニに入っていった。
もしかすると、まだ一緒にいたかったのではないかと思うと、居ても立っても居られなくなり、後を追う。
コンビニに入ると、女性は買い物カゴに缶ビールを2本入れているところだった。
「なんだ!私も呑み足りなかったんだよ。」
「うわ!ビックリした。」
「せっかくだしさ、もうちょっと呑もうよ。」
そう言って返事を待たず棚から自分用の缶ビールを取り、相手のカゴに入れた。少しでも拒否反応があればすぐに戻すつもりだった。
「・・・まあいいですけど・・・。」
「よし!決まりね!おつまみは要る?」
「いえ。呑むだけで。」
「おけっ!レジいこ!」
呑む場所を訊かれないということは、相手も「自分の部屋」だと理解しているはずだ。私は相手の気が変わらないうちにとさっさとレジに進んだ。
店員にこのやりとりの一部始終を聞かれていたが、恥ずかしさより喜びと興奮の方が大きかった。
そう。一番楽しみたいのはこれからなんだ。
とはいえ、レジを通している間、心の中で「この後の展開は一体どうすればいいんだろう?」と考えていた。
ワンナイトラブになる展開を作っておきながら、完遂する方法は全く知らなかった。
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ガンバボーイさんはじめまして!嬉しいコメントありがとうございます!
続きは近々公開できますので、もうしばらくお待ちください~(*´▽`*)
ただただシンプルに、続きが気になります!!!