この記事は、
の続きです。
波紋の形が残るシーツの上で2人は寝そべり、大分県×石川県の方言ピロートーク。
「名前教えち欲しい。」
「このまま知らんくても面白いことないけ?笑」
「笑。」
「・・・錬や。風来のナンパ師やぞ。」
「笑。」
「チミの名は?」
案件はHまではひたすら丁寧語だったが、それ以後はタメ口になった。私はアラフォーなので ゲット の相手はほぼ年下だが、彼女らの多くはこの機を境にタメ口へと変化した。これはきっと心の距離が縮まったゆえなのだと思うし、同時にHとはコミュニケーションの一環なのだと、この時いつも思うのだ。
そして、”丁寧語という標準語”から解放された案件の口からは、方言が自然にあふれ出す。素直な感情と共に。
やっとの念願成就に私はずっとこの雰囲気に浸っていたかったが、ここまでの9日間の長距離運転(1498km)と車中泊、そしてスト(231508歩)で、すでに身も心もヨレヨレだった。
それに加え、ひと仕事し終えた私を包みこむ人肌とシーツの温もりが、まるで母親に抱かれる赤ん坊のような安息感を私にもたらしていた。案件はいつの間にか饒舌になっていて、私は相づちを打つだけで良かったのだが、途中からはコクリコクリと同じ動作を繰り返すばかりになっていた。
・
・・
・・・
「・・・錬?起きちょん?」
「∑(!? ̄Д ̄)<んあっ!?・・・ああ、起きとるよ。(σω-)。о゜」
時刻は2時どころか3時をとっくに回っていた。私が居眠りしている間に案件は宿泊することに決めたらしく、彼氏には「友達とカラオケでオールしてそのまま仕事に向かう」と伝え、外泊許可を得たらしい。なので、5時過ぎの始発電車でのお別れになる(どうやらタクシー代は払わずに済みそうだw)。
案件は、私の腕の中で「また会いてぇ」という言葉を口にした。
ナンパ師冥利に尽きる言葉だ。相手を魅了することができたという実感が湧いてくる。
この言葉の真意は図りかねた。一期一会の魔法が案件の恋愛感情を呼び起こしたのかもしれない。出会ってから2時間半でベッドインしていることを”運命を感じる相手”だと感じたのなら、その反応も無理もない。
ただ、私はまた会いたいとは思わなかった。
私には、2人の関係が袋小路に向かっているように思えた。その原因は、即という結果のために仮初めのアドバイスを与えたこと(リンク:旅ナンパ九州編9日目終盤<福岡県3>)。これは案件を 仕上げ るための甘い誘惑であり、 ラポール とは言えなかった。
H後はお互いの心の距離が縮まるとは思うが、関係の継続を見据えるなら、最初から正しいラポールの順序を踏まなければならない。今回は即へのこだわりと時間の都合でそれができなかった。
そして、ゲット後にそれをするのは私にとってかなり億劫だった。ましてや遠距離の相手ともなると。
「なあ。」
「ん?何ちぇ?」
「・・・こんな出会い方やし、思い出のままにしたいげん。」
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案件はそのまましばらく視線を落としていた。
そしてまた私を見つめて言った。
「わかったちゃ。」
5時。部屋の入口のドアを開けると、通路の蛍光灯と白みがかった光が同時に差し込んできた。新しい洋服を身にまとった案件とお別れのキス。
「結婚願望、見つかった?」
「わからん笑。・・・でも。」
「でも、何?」
「うふふ。何でもない。」
「?」
「・・・それじゃ、行くね。」
「うん。元気でね。」
案件は最後に私に笑顔を見せてくれた。そのえくぼは、どことなく儚げだった。
足音が聞こえなくなりそっとドアを閉めると、私はまた独りになった。ふと我に返り、胸ポケットに差さっているICレコーダーの録音ボタンをオフにする。
即までの一部始終。成功体験を振り返ることでも成長につなげることができる。
カチッ。
あれ?すでにオフになってる。いつしたっけ?
再生してみる。
ピピー![データがありません。]
もう一度再生ボタン。
ピピー![データがありません。]
録音してなかった(>_<)。。
・
・・
・・・
なにやってンだ、もぉ~~っ!!(´; д ;`)
―――ベッドの上。私は案件の枕に顔をうずめ、この旅を振り返っていた。
9日間はあっという間だった。結果を出せてホッとしているけれども、 坊主 の日々も楽しくて仕方がなかった。
でも、もうお金も体力も底をつき始めている。ここを出たら帰路につかねばならない。
チェックアウトは12時。7時間後だ。それまではここで彼女の余韻に浸っていたい。
そう願いながらも、枕から残り香を感じられなくなっているのは、私がすでに夢の中に足を踏み入れたからなのだろうか。
再び薄れゆく意識の中で、私は今日という日をまぶたの裏にそっと焼きつけた。
RESULT
福岡市3日目 1アポ(負け)、1即♪(大分県民 in 福岡市)
出費 14349円(残金15298円)
歩数 26370歩
ゲットまでの時間 150分
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記事のあとがき:
- LH1軒目 18400円の件。この記事を書くにあたり、料金は検索しても出てきませんでした。一瞬記憶違いが脳裏をよぎりましたが、料金聞いた瞬間即ヤメを判断するほどの金額だったのは事実ですw
- 九州編9日目 序盤~このラストパートを書くにあたり、インスピレーションを受けた動画。サカナクションの「さよならはエモーション」
曲の大サビ部の歌詞、「光を抜け。」これは相手の思考を先回りするという意味で捉えました。ナンパのシーンのみならず、相手の言葉遣いから”相手が無意識に望んでいること”を知ることがあります。そしてその言葉を用いて、相手の グダ を回避しながらこちらの要求を呑ませていく(これもナンパの醍醐味の1つと言えますね)。
完璧に構築した未来に誘い込む。これは本来抜けないはずの光を抜いた、と表現できるのではないでしょうか。
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下記のあなたのご支援が私の活動を支えています。これからも風来のナンパ師「錬」を宜しくお願いします!